1型・2型5αリダクターゼは両方抑制するべき?その違いとは

AGA予防対策
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AGA治療薬には2型5αリダクターゼを抑制するフィナステリド(プロペシア)と、1型5αリダクターゼと2型5αリダクターゼ両方を抑制するデュタステリド(アボルブ、ザガーロ)があります。
どちらを抑えればいいのかは、AGAを治療する上でぜひ知っておきたい情報のひとつです。
今回は1型5αリダクターゼと2型5αリダクターゼの違いや、どちらを抑制すべきかを解説します!

1型5αリダクターゼと2型5αリダクターゼの違い

男性型脱毛症(AGA)の発症には2つの酵素、1型5αリダクターゼと2型5αリダクターゼの働きが深く関与しています。

薄毛を進行させるジヒドロテストステロンは、男性ホルモンであるテストステロンが1型5αリダクターゼや2型5αリダクターゼと結合することで生成されます。

このジヒドロテストステロンが毛乳頭細胞にあるホルモンレセプター(ジヒドロテストステロン受容体)に結合すると、TGF-βと呼ばれるサイトカイン(細胞の働きを調節するタンパク質の一種)が産生され、このTGF-βの働きによって脱毛が促進されて薄毛が進行します。

それではAGAの原因となる2種類の酵素、1型5αリダクターゼと2型5αリダクターゼにはどのような違いがあるのでしょうか。

1型5αリダクターゼの特徴

1型5αリダクターゼは側頭部や後頭部の皮脂腺に多く存在しているという特徴があります。そのため、1型5αリダクターゼの働きが強いと産生された多くのジヒドロテストステロンが皮脂線に作用するため皮脂の分泌量が増えます。

したがって、AGAの方で頭皮が脂っぽいという方は1型5αリダクターゼが強く働いている可能性が高いと考えることができます。

2型5αリダクターゼの特徴

これに対して、2型5αリダクターゼは前頭部頭頂部の毛乳頭に多く存在しています。毛乳頭は毛細血管から供給される栄養をもとに毛髪を成長させる働きをしており、発毛において非常に重要な役割を果たしています。

したがって、毛乳頭でジヒドロテストステロンが大量に産生されると正常な発毛サイクルが阻害され、AGAが進行することとなります。

1型5αリダクターゼと2型5αリダクターゼどちらに注意が必要か

1型5αリダクターゼと2型5αリダクターゼを抑制するための研究

それではAGAの進行に与える影響は、1型5αリダクターゼと2型5αリダクターゼのどちらが強いのでしょうか?

AGAの進行パターンは頭頂部から周囲に薄毛が広がっていくいわゆる「O型(O字ハゲ)」と、前頭部の生え際が徐々に後退していくいわゆる「M型(M字ハゲ)」と呼ばれるタイプが多数を占めています。

この「O型」と「M型」の脱毛部位はちょうど2型5αリダクターゼが多く分布している箇所と一致することから、これらの部位の脱毛は2型5αリダクターゼの影響を強く受けていると考えられます。

また、2型5αリダクターゼ欠損症という、生まれつき2型5αリダクターゼが産生されない疾患を有する男性ではAGAはみられないことも報告されています。

さらに、2型5αリダクターゼは1型5αリダクターゼよりもジヒドロテストステロンを産生する作用が強力であり、体内で産生されるジヒドロテストステロンの60~70%は2型5αリダクターゼによるとも言われています。

このような事実を考慮すると、2型5αリダクターゼの働きを抑制することがAGA治療において非常に重要であることが分かります。

ではAGA治療には1型5αリダクターゼを抑制する必要は無いのかと言うとそうではありません

2型5αリダクターゼほどではないものの、1型5αリダクターゼもAGAの進行を促進すると考えられます。実際に、体内のジヒドロテストステロンのうち約30%は1型5αリダクターゼの働きにより生産されています。

また、1型5αリダクターゼは皮脂腺に多く分布することから、皮脂が多量に分泌され、頭皮が脂ぎっている方では特に大きな影響を受けていると考えられます。

このような理由から、AGA治療において万全を期すためには2型5αリダクターゼだけでなく、1型5αリダクターゼの働きもしっかりと抑えることが重要であると言えます。

ご自身のAGAがどの程度1型5αリダクターゼの影響を受けているかを判断することはなかなか難しいですが、例えば、2型5αリダクターゼ阻害薬を服用してもなかなか効果が得られないというような場合には、1型、2型両方を阻害する薬の服用を検討することも必要になるでしょう。

1型5αリダクターゼと2型5αリダクターゼを両方抑制するには

AGA治療薬開発のイメージ

AGAの治療薬として代表的なものにフィナステリド(商品名:プロペシア)があります。フィナステリドの内服薬は日本皮膚科学会によるAGA診療ガイドラインではAランク=「行うように強く勧められる治療法」に分類されており、幅広く用いられています。

フィナステリドは2型5αリダクターゼの働きを選択的に阻害することで、テストステロンからジヒドロテストステロンへの変換を抑制し、脱毛を防止する働きをします。

ここでのポイントはフィナステリドが2型5αリダクターゼを「選択的」に阻害することです。
フィナステリドは無数に存在する1型5αリダクターゼと2型5αリダクターゼの中で2型のみに作用しますが、これは同時に、1型5αリダクターゼによるジヒドロテストステロン産生は抑制できないことを意味します。

さきほども述べたとおり、より効果的なAGA治療には1型と2型両方の5αリダクターゼを抑制する必要があるため、この点においてフィナステリドの働きは不十分であると言えます。

こうした欠点を補うための薬として、デュタステリド(商品名:ザガーロ)があります。

デュタステリドは1型5αリダクターゼと2型5αリダクターゼの働きを同時に阻害し、また、2型5αリダクターゼに対する阻害作用もフィナステリドより強いと言われます。

海外で行われた臨床試験でデュタステリド0.5mgとフィナステリド5mgを別々の患者に半年間投与して効果を比較した結果、デュタステリド0.5mg服用患者の方が発毛量が30%多かったという報告もあります。

このようにデュタステリドは強力な作用を持っており、AGA治療の切り札的存在とされています。
しかし、強い作用の裏側には副作用のリスクも潜んでいることから使用に際しては十分に注意を払わなければなりません。

デュタステリドの主な副作用とその発生頻度

○肝機能障害、黄疸(頻度不明)
○発疹(1%未満)
○蕁麻疹、アレルギー反応、そう痒症、限局性浮腫、血管浮腫(頻度不明)
○頭痛、抑うつ気分(1%未満)
○浮動性めまい、味覚異常(頻度不明)
○性機能不全(リビドー減退、勃起不全、射精障害)(1%以上)
○乳房障害(女性化乳房、乳頭痛、乳房痛、乳房不快感)(1%未満)
○精巣痛、精巣腫脹(頻度不明)
○脱毛症(主に体毛脱落)、多毛症(頻度不明)
○腹部不快感(1%未満)
○腹痛、下痢(頻度不明)
○倦怠感、血中クレアチンホスホキナーゼ増加(頻度不明)

このように多くの副作用が報告されていますが、中でも性機能不全は発生頻度が1%以上と他の副作用と比べて高く、気になる方も多いのではないでしょうか。

国内で実施された長期投与試験ではデュタステリドを投与した120例中、13例(10.8%)で勃起不全、10例(8.3%)で性欲減退、5例(4.2%)で射精障害が認められています。

デュタステリドは男性ホルモンの働きを抑える薬であるため、多少の性機能低下が起こるのはやむを得ないと言えますが、お子さんを持つことを希望されている方などは事前に医師に相談すると良いでしょう。

また、デュタステリドは口に入れなくてもカプセルの内容物が皮膚に触れただけで吸収される性質をもっているため、家族や周囲の人が薬に触れないように十分に注意する必要があります。

特に妊娠した女性の体内にデュタステリドが吸収されると胎児の器官形成に悪影響を与える恐れがあるため、ご家族に妊婦さんがいる場合はしっかりと注意喚起しておきましょう。

万一誤ってカプセルの内容物に触れてしまった場合は、直ちに石鹸で洗い流すようにします。

効果の強い薬には副作用に対するリスクがつきものです。使用に際しては、正しい服用方法を順守し、万一、服用中に異常が見られた場合は直ちに医師や薬剤師に相談するなど安全性の確保に万全を期すことが大切と言えます。

まとめ

効果の高いAGA治療を行うのであれば、1型5αリダクターゼと2型5αリダクターゼの両方が抑制できるデュタステリドがおすすめですが、進行状態状態によってはフィナステリドの服用だけで治療効果が実感できる場合もあります。
AGA等の薄毛治療は長期的な投薬が必要となる場合もあるので、副作用のリスクも含め、できれば医師の診断の元で何を服用するのか決めるのが一番正確でなおかつ安全です。
最近では遠隔診療で通院ナシのオンライン治療を行うクリニックも増えてきているので、通院に抵抗がある方は、ぜひそちらを利用してみてください!

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